複文化主義の視点に立ったキャリア教育ワークシート「ぼうけん!」をリリース
更新日:8月13日
〜多文化時代を生きる若者のキャリア教育×エンパワメント支援プロジェクト〜 外国にルーツをもつ若者向けキャリア教育ワークシート「ぼうけん!(ポルトガル語併記版)」をついにリリースいたしました!
本冊子は、文部科学省『令和7年度「生活者としての外国人」のための特定のニーズに対応した日本語教育事業』を採択して取り組んだ「若者の自己形成につながる日本語教育のモデルづくりとバイリンガル人材育成事業」の成果をもとに、DiVE.tvが内容の一部とデザインを改訂して発行したものです。
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日本で育つ外国ルーツの子ども・若者は急増しており、日本語支援だけでなく、進路指導やキャリア教育のあり方が重要な課題となっています。特に東海地方では、公立学校から在日ブラジル学校等の外国人学校へ転入する生徒も多数存在し、進路選択はより複雑になっています。
そこで私たちは、「日本語」「日本社会」「自分自身」をできるだけ丁寧に掘り下げて理解できるような、外国にルーツのある若者向けのキャリア教育が必要だと考えました。 ▪️ 複文化人材の育成が急務 近年ニュースでもよく取り上げられるようになった「多文化共生」という言葉は、多様な文化背景をもつ住民が共に地域社会を築こうという理念です。
一方で、複数の文化的価値観や経験をもつ個人の在り方を大切にしようという「複文化主義」も、近年注目されるようになってきました。バイリンガルやトリリンガルといった複数言語を話す能力に限定せず、複眼的な視点でものごとを捉えたり人間関係を築いたりできる人を評価する考え方です。
この考え方は、日本の多文化共生を考える上で非常に重要です。
長い歴史と独特な文化をもつ日本にとって、海外諸国と日本の間に立ち、うまくつないでくれる役割は必要不可欠だからです。インバウンドの拡大においても、外国人材の雇用促進においても、通訳にとどまらず両者にきめ細かく配慮できる「複文化人材」の活躍が今後の成功の鍵を握るのではないでしょうか。
では、外国ルーツの子ども達をそうした人材として育てるためには、どうしたらよいのか。
それは単に「日本語」や「教科学習」を指導するだけでなく、「アイデンティティの形成」や「日本社会の理解」「コミュニケーション能力の向上」などいわゆる『キャリア教育』を丁寧に行うことが欠かせません。中でも「アイデンティティの形成」は外国ルーツの子ども若者に特段必要な要素であり、かつ成長段階に応じた適切な支援を要するものです。
この度制作したワークシートは、文部科学省が推奨しているキャリア教育の方針をもとに、ブラジルの教育省が本国で行なっている「Projeto de vida(プロジェト ジ ヴィダ:直訳では "人生プロジェクト")」というキャリア教育の考え方を取り入れました。
日本のキャリア教育が職業選択を重視しているのに比べ、ブラジルのキャリア教育は私生活を含む生き方や個人の在り方を重視しています。(ブラジルで教育関係者にヒアリングした内容を後述しています)
それらを融合させ、週1回の授業で1年間を通して学べるよう編集しました。 ▪️ ワークシートの概要 【タイトル】 ぼうけん!
【コンセプト】 自分に自信をもち、広い視野でものごとを捉えたり関係性を築きながら、自分の意志で人生を切り開いていける力を育むためのワークシート
【仕様】 フルカラー56ページ / A4サイズ / 中綴じ
【発行日】 2026年4月
【発行元】 一般社団法人DiVE.tv
【デザイン】 吉永ヒデキ
【価格】 3000円(寄付付き商品、税込)
【入手方法】 It's ME CAMP 2026 クラウドファンディングページ(こちら)

内容は1〜3学期制を想定し、3つの構成に分けています。
1学期では「自己」に焦点を当て、性格や背景(カルチャー)を認識することで自分の強みに気づくことを目標にしています。
第1章 2-1, 2-2 第1章 2-4, 2-5
2学期は「仕事」に焦点を当て、自分の適性や夢を具体的に考えられる内容です。
そして1学期の内容と合わせて「ドリームツリー」を描き、言葉と絵で自分だけの樹をつくることをアウトプットとしました。
第2章 4-3 第2章 5-1
3学期は「社会」に焦点を当て、まだ行ったことがない場所に行ってみること、そしてそこで働いている人を観察することを課題にしました。そしてそれらをグループまたはクラスで発表し合うことで、視点や経験の違いに気づけるようになっています。
第3章 6-1, 6-2 第3章 7-1, 7-2
▪️ 日本 × ブラジルのキャリア教育をミックス(これまでの経緯) DiVE.tvでは、2020年から本格的に若者支援に取り組み始めました。特に愛知県にはブラジル国籍の人が多いことから、ブラジルにルーツをもつ若者に焦点を絞り、県内3ヶ所のブラジル学校で日本語の授業支援を行ってきました。
ブラジル学校では、中学〜高校に学年が上がるにつれ、生徒数が多くなる傾向があります。日本の公立学校から転入してくる生徒が増えるからです。
そしてそうした生徒たちから「日本語はわかるけど、自信がないから話せない」「勉強のモチベーションが上がらない」「将来どうすればいいか分からない」という声を多く聞きました。
その中で見えてきたことは、「日本語」と「社会」と「自分」の3者をバラバラに理解しようとしているがために、いずれも中途半端になって理解できなくなっているのではないか...?ということでした。
ちょうどその頃にブラジル本国で「Projeto de vida」というキャリア教育の科目が始まったことを知り、社会理解については日本語の授業の中でも学べると良いのではないかと考え、様々なプリント教材を作って試行錯誤を繰り返しました。


さらに今年5月には、DiVE.tv代表の牧野がブラジルに渡航。「Projeto de vida」を実施している4つの学校を訪問し、担当の先生方にヒアリングを行いました。
その結果、参考になったのは次のような意見です。
✔️ Projeto de vidaは「個人の幸福を追求する」ことを大切にしているが、生徒たちはその意義を感じられないことが多いため、教師が様々な工夫をする必要がある(教材があればできるというものではない)。
✔️ 特に生徒と信頼関係を築き、心を開かせることが非常に重要。
✔️ 授業内または提出された課題の中から、精神的ケアが必要な生徒を早期に発見し、スクールカウンセラー等の専門家につなぐこともProjeto de vidaの重要な役目になっている。
✔️ 評価は点数ではなく、授業に対する意欲を教師が個別に判定している。特にディスカッションを通して新たな気づきが得られたかどうかが重要。
✔️ 教師のスタンスや経験値が授業の質に大きく影響するため、担当教員同士のネットワーク(定期的な勉強会など)が必要。
サンパウロ市南部にあるルイ・ブレン州立学校 私立高校でProjeto de vidaを教えているソランジ先生 日系の私立学校 ピオネーロ学園 日系の私立学校 アルモニア学園(この日は校庭で授業実施)
そして現在は愛知県立明和高校の夜間定時制にて、代表の牧野が「ぼうけん!」を使ったキャリア教育の授業を行いながら、来年以降の改訂に向けて実践を重ねています(同校の新1年生は、外国にルーツをもつ生徒が約9割に上っています)。
今後は、外国人生徒が多い全国の公立・私立高校に本ワークシートを普及すると同時に、日本語やキャリア教育に関する授業で先生方に使っていただけるよう、教師向けマニュアルや補助教材なども制作したいと考えています!



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