ACTIVITY REPORT
令和7年度「生活者としての外国人」のための特定のニーズに対応した日本語教育事業
【地域日本語教育実践プログラム】
【1】外国人学校における日本語教育の可能性について考える運営委員会
-
本事業全体の内容・進捗・方向性を年3回のオンラインミーティングにて確認し、評価方法を明確にしました。また、成果物が広く活用されるよう方向づけを行いました。
運営委員
*2025年度の所 属および肩書きです。
牧野 佳奈子氏(一般社団法人DiVE.tv 代表理事)
和田 貴子氏(一般社団法人HORIZOPIC 代表理事)
佐野 香織氏(武蔵野大学 教授)
吉富 志津代氏(武庫川女子大学 教授)
高綱 睦美氏(愛知教育大学 准教授)
吉川 夏渚子氏(同志社大学国際教養教育院 助教)
三浦 桂子氏(YAMASA言語文化学院 副校長)
惟任 将彦氏(大阪YMCA学院日本語学科 教務主任)
宮ヶ迫 ナンシー 理沙氏(地域コーディネイター)
【2】在日ブラジル学校における効果的な 日本語教育の実施体制づくり
・EAS豊橋校にて、高校生4クラスに対して日本語の授業を実施

合計約90人に対し、日本文化や日本社会について学ぶキャリア教育ワークショップを実施しました。
写真は、ブラジル人の三味線奏者マテウス B. オリベイラ氏を招いて実施した体験型授業。
・HIRO学園にて、高校生3クラスに対して日本語の授業を実施

合計約40人に対して日本語の授業を実施し、前半は文法解説、後半は絵カードやゲームなどで会話練習をしました。
写真は、お金や商品の絵カードを使って買い物ゲームを楽しむ生徒たち。
・外国人生徒向けのキャリア教育カリキュラム・評価基準表・ワークシートを作成

年間のカリキュラムは「自分を知る」「仕事を知る」「社会を知る」という流れで組み、その過程で6つの力(評価基準表の項目)を高められるようにしました。また活動内容は、文科省の「キャリア教育の手引き」をベースに、ブラジルで実施されている「Projeto de vida」の内容を加えて作成しました。
【3】在日ブラジル学校における日本語教育を考えるシンポジウム
計画時には在日ブラジル学校の関係者の参加を促す予定でしたが、本事業が1年で終了することになったことを受け、本取り組みの主な対象者を「若者の日本語教育に従事している人」に変更し、ハイブリッド配信で開催しました。



当日は対面25名+オンライン90名が参加し、事後アンケートで以下のようなコメントが寄せられました。
-
キャリア形成の支援というのは何も外国にルーツをもつ若者だけの問題に限らず、日本国内の日本の若者にも、どの国の若者にも必要なことになっているんじゃないかと感じざるを得ませんでした。
-
日本語を教えるだけでなく、人生・生活・社会のあり方も自分で考えることができるように支援するんだとわかりました。
-
キャリア教育だけが取り出されることなく、課題解決能力とか人生に必要な能力をのばしていくことが大切だと思いました。今後もこういう課題を考え、共有できる場があるといいと思いました。
-
生徒に主体的かつ肯定的に自身のキャリアを考えさせていくような支援が重要なのだとよくわかりました。
-
日本語教育やキャリア支援に関わっている人たちは、各地にいます。それを横につないで、それぞれの現場で、学校の中と外をつなぐ実践を共有し、広めていくことが必要だと思います。
【4】バイリンガル人材養成講座
言語だけでなく文化背景や経験を含めた「複文化能力」を発揮できる人材の育成を目標に、次の連続講座を開催しました。


初回の講座には、ブラジル・アルゼンチン・中国・台湾にルーツをもつ4人の若者が参加。「大学で様々な出会いや機会を得て自分らしさを取り戻したものの、就職活動でつまずき、方向性を見失っている」という 意見が4名中3名に共通していました。そして全員が「本講座でこれまで出会う機会のなかった仲間に出会えて刺激を得た」と感想を述べてくれ、お互いにルーツの国や文化背景について興味深く語り合っていました。

最終回には7人の若者が参加し、進路相談を受ける際の留意点を踏まえ、ペアになって相談し合うワークを行ないました。信頼関係の有無が相談しやすさに大きく影響することや、答えを示したり導いたりする必要はないということ等、受講者それぞれに気づきがあり有意義な講座となりました。


「愛知商工連盟協同組合」と「ブラ ジル人学校EAS豊田校」の協力で、受講生3名がインターンシップ(職業体験)を行いました。
【5】オンライン個別相談

在日ブラジル学校2校の高校3年生、合計約70名に対して進路相談の案内を配り、希望者に対して順次オンラインで対応しました。
相談を希望したのは8人で、うち5人がポルトガル語、2人が英語、1人が日本語を希望しました。内容は、6人が進学に関する相談で「大学に進学したいがどこに行くとよいか分からない」「N2に合格するための学習方法を知りたい」などでした。1人は留学に関する相談で、「どのように行き先を決めるとよいか」、残り1人は「働きながら専門的なコースを学びたい」という内容でした。
いずれも「夢や目標はあるものの自信がない」という内容の相談だったので、既に今できていることを列挙して励まし、具体的な計画を一緒に考えた上で、必要な情報や選択肢を提供しました。
活動の成果
① 多文化キャリア教育の教材づくり
若者に対して日本語教育を実施する際、最も難しいのは学習のモチベーションを高めることです。今回様々な専門家と議論しながら作り上げた多文化キャリア教育のカリキュラム・評価基準表・ワークシートは、教育の根源ともいえる「学ぶ意味」を生徒が自ら考えられるよう吟味して作りました。
それらの成果物はもちろん、議論の過程で出されたたくさんの意見や見解も、本事業で得られた貴重な財産となりました。
② 外国にルーツをもつ若者当事者による支援促進
本事業では、多文化共生分野で活躍する外国人当事者の若者を育成することを目的に、バイリンガル人材養成講座を開催しました。そこに集まった合計12人の若者に「当事者だからこそできる支援がある」という意識をもってもらえたことは大きな成果でした。
またオンライン進路相談では、在日ブラジル学校 を卒業後日本の大学に進学した若者2人が相談員となり、高校生から進路の悩みを聞き出す重要な役を担いました。そうした支援のあり方や方法、留意点を実践を通して考え、かつ可能性を感じることができたことも非常に意義深かったと思います。








今後の課題と取り組み
☑︎ 多文化キャリア教育の教材改善と普及
本事業で作成した教材をさらにブラッシュアップし、様々な教育現場で使っていただけるよう改訂して普及させたいです。
☑︎ バイリンガル養成講座の継続
多文化人材の育成を継続し、受講生が学校などで支援員として活躍できるよう後押ししたいです。それによって支援の質も高まることを目指します。
☑︎ 多文化キャリア教育に携わっている人同士のネットワークづくり
学校現場でキャリア教育や進路指導に携わっている人と、地域に日本語教室などで外国にルーツのある子ども若者を支援している人がお互いに情報共有できる場をつくりたいです。

