見るより、聞くより、まずは触れろ!
- 一般社団法人 DiVE.tv
- 2025年8月6日
- 読了時間: 6分
更新日:2025年8月8日

2021年から継続的にIt’s ME CAMPを支援してくださっている株式会社 馬見塚建設。自社の人事面でも、国籍を問わず若者の採用と育成に力を入れています。その企業マインドについて、馬見塚昭徳社長に伺いました。

Q. 貴社は建設業の中でも「型枠大工」という仕事ですね。どんな仕事内容なんですか?
「型枠」というのは、まだ柔らかい状態のコンクリートを流し込んで形をつくるための枠のことで、それをつくる人のことを「型枠大工」といいます。ビルやショッピングセンター、スタジアム、橋、トンネルなど、コンクリートの建物にはいろんな形がありますよね。その図面に沿って精密に型枠をつくり、コンクリートを流し込んで固まったら枠を解体する、というのが大まかな内容になります。
Q. 大きい建物だと相当な人数が必要そうですね。
貴社ではどのような人が働いてらっしゃるんですか?
建築の専門学校を卒業した人もいますし、高卒の子や、全く違う業界から転職してきた人もいます。
入社時に資格が必要なわけではないので、やる気さえあればどんな人でもウェルカムですよ!
最初は図面の見方を覚えてもらって、そのうちパソコンでCADもできるように教えます。

Q. 外国出身の社員さんは、どれくらいいますか?
もともとは中国出身の技能実習生を雇ってたんですが、今はほとんどインドネシア出身で
す。中国から日本の建設業を希望する求職者は、もう集まらなくなってますね。まじめで
優秀な人が多かったんですが。
インドネシア人の実習生は、今は10人弱です。彼らもよく働いてくれるので助かってます
よ。全体的に見るとやはりお国柄があって、インドネシアの人たちは陽気だから現場が明
るくなります。
Q. 若者を採用する時は何を重視していますか?
…顔つきかなぁ。面接で入ってきた時の第一印象は大事にしてますね。本人は緊張してる
だろうけど、なんとなく自信ありそうな顔つきしてると「おっ」と思いますよね。
あとは雑談してその子の性格を探ります。
日本語ができるかどうかは、大事ですけど一番ではないです。多少ハチャメチャなこと言
ってても、元気よくハキハキ喋れればそれでいい。言葉の能力は後から巻き返せますが、
その人の素質や性格はなかなか変わりませんから。
Q. そうすると、その人の自己肯定感や自尊心が大切になりますね。
そうですね。特にこれからはAIの時代になるので、言葉の問題はどんどんなくなると思い
ます。たとえば日本人でも漢字がほとんど読めない子がいるんですね。でも話したり図解
すればわかる。そうした特性にも、AIがあれば簡単に対応できます。
なので、言葉よりもむしろその土台となるモチベーションや学ぼうとする姿勢、明るさ、
素直さ、協調性などが大事だと思います。

Q. なるほど。そうした部分を成長させるために、貴社ではどのような社員教育を
されてるんですか?
今は働き方改革で仕事時間が減ってるので、教える時間も、経験を積める時間も昔に比べ
て減ってるんですよね。だから、どんな現場でも任せられるレベルになるには、8年くら
いかかります。日本人か外国人かに関わらず。
なので、今はまずそれぞれの得意分野を伸ばして、その他は少しずつ底上げしていくとい
う教え方に変えました。誰でも何か1つは得意分野があるので、その分野で少しずつプレ
ッシャーを与えていく。たとえば2〜3年目の社員2人だけで現場に入ってもらって、簡単
な指示だけしたらしばらく様子を見たりしていますね。
昔と違うのは「見て学べ」という昔ながらの職人スタイルではなく、「見るより、聞くよ
り、まずは触れろ」──これは、私たちが大切にしている教育の基本姿勢です。
特に型枠大工の技術は、頭で理解するだけでは身につきません。実際に手を動かし、木材
や金物に触れ、音や重さ、微細なズレを “身体で感じること” こそが、真の習得につながり
ます。
もちろん安全面には最大限配慮しつつ、若手にも積極的に道具を握らせ、現場の空気に早
く馴染めるよう指導しています。失敗もまた学びの一部であり、そばで見守る職長がその
場で軌道修正を行いながら、技術と姿勢の両面を育てていきます。
知識ではなく“感覚”を先に育てる。それが、将来どんな現場でも通用する「地力」になる
と信じています。
Q. 小さい挑戦と成功体験を積み重ねる。
そう。その何百何千という積み重ねですね。昔ながらの職人は、人に教えるという技術
が無かったからこそ、このスタイルだったのでは?と私は思っています。
あとは、自分の言いたいことが言えるように恐怖心や緊張感を取り除くことです。「間違
えても怒られない」と分かれば、安心して質問できるようになる。
そして、あとはとにかく慣れることですね。頭の中で自分がやることをイメージできる
ようになれば、自信がついてきます。それを手っ取り早く進めるためには、得意分野の
仕事に慣れて自信をつけさせるのが一番なんですよ。

Q. 「It’s ME CAMP」に対する期待や協賛してくださる理由も、そこに通じるところがあり
ますか?
そうですね。「It’s ME CAMP」は若者の視野を広げるという意味で、とても良い活動だと
思います。
しかも親が外国人で日本で育っている若者とは普段接する機会がないので、全く状況が
わからない。その背景や状況を、テレビやインターネットからではなく直接知れるとい
うのも貴重です。
自分の社員だったら会社が守れますが、それ以外の人たちには何もできないから。でも
同じ地域に生きていて、全く関係ないはずはない。だから間接的にでも、応援できるな
ら応援したいと思っています。
Q. どうもありがとうございます。
今後はもっと多くの外国人が日本に住み、学校でも職場でも、どんどん多様化が進むと
思います。そのことについてはどう思いますか?
日本に働きに来る人だけじゃなく、日本で子育てをして永住する人が増えるのはいいこと
だと思いますよ。だって家族は一緒にいた方が楽しいでしょう?一生懸命働いたら、それ
がお金だけじゃなく精神的な幸せにもつながってほしい。家族と離れて暮らす技能実習生
を見ていると、特にそう思います。
15年くらい前は、外国人を雇ってるというだけで仕事を断られたり、外国人は現場に入ら
ないでと言われることがよくありました。言葉が通じないために事故が起きる可能性があ
るということで。
でも今では外国人の社員が現場で大活躍しているし、彼らなしでは日本の建設業は全く立
ち行かない程です。なので、今後10年で外国人に対する価値観はもっと大きく変わるんじ
ゃないですかね。今の30代の現場監督が所長クラスになる頃には、外国人の職長も当たり
前に認められるようになるんじゃないかと思います。
Q. 多様な人が働きやすくなったら、きっと子ども世代にも良い影響が出てきますね。
いろんなところに、いろんな国籍の人が当たり前にいるのが理想的なんじゃないですか。
僕はその方が好きですね。日本人だけだとどうしても意識が狭くなってしまうので。
世界はこんなに広いのに、小さいところしか見てなかったらもったいないと思います。今
は外国どころか仮想世界もどんどん広がっていて、人生の楽しみ方は無限になってますよ
ね。若い人たちには、いろんなものを見て、感じて、考えて、新しいものにどんどん触っ
て、自分の可能性を広げていってほしいです。
取材日:2025年7月16日
聞き手:牧野佳奈子(一般社団法人DiVE.tv)
株式会社 馬見塚建設
愛知県長久手市市が洞1-501-901






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